耐摩耗の参考値(目安)
試験片のTaber摩耗(CS-17, 1kg, 1000回転)では、一般的な車輪用PUで70〜120 mg程度の摩耗量が一つの目安として語られます。溝の有無よりも、配合と表面の欠けにくさ(チッピング耐性)が寿命を左右します。
雨上がりの歩道、駅構内の清掃直後の床、空港の濡れたタイル。こうした環境でスマートスーツケースの車輪が急に滑りやすくなるのは、タイヤ表面と路面の間に薄い水の層(水膜)ができ、摩擦が一時的に落ちるためだと考えられています。感覚的には「氷の上」ほどではないものの、小径ホイールほど路面の凹凸を拾いにくく、接地面の水を逃がせないと、急にグリップが抜けたように感じる場面が増えます。
ここで重要なのが、タイヤ材質の摩擦係数だけではなく、濡れた接地面からいかに速く水を排出できるかという設計視点です。いくらPU(ポリウレタン)が耐摩耗に優れていても、表面が「つるり」としたままだと水膜の影響を受けやすい。そこで注目されるのが、導水槽(排水溝)構造を持つPUトレッドです。
導水槽付きPUタイヤは、トレッド表面に浅い溝やチャネルを設けることで、接地時に生じる水を横方向・後方へ逃がす通路を作ります。イメージは、濡れたテーブルを布巾で拭くときに、布巾の繊維が水を抱え込みながら外へ押し出す動きに近いでしょう。溝がない場合、タイヤと路面の間に水が「挟まったまま」になりやすく、摩擦が不安定になりがちです。
物理的には、導水槽があることで接地パッチ内の水の滞留が減り、路面の微細な凹凸にトレッドが触れやすい状態が生まれます。結果として、濡れた路面で問題になりやすい「初動の空転」や「方向転換時の横滑り」の発生確率を下げ、体感としても落ち着いた転がりへ近づきます。
スマートスーツケースや自動追従デバイスは、一般的な台車よりもホイール径が小さく、荷重も変動しやすい設計が多い傾向があります。こうした条件では、濡れ面でグリップが「ゼロか100か」のように急変しやすい。導水槽構造は、まさにこの急変をなだらかにして、安定した摩擦を確保しやすい方向へ寄与します。
湿潤路面の性能は、素材だけでなく溝形状、溝量(溝の体積)、接地圧、路面材(タイル/コンクリ/エポキシ床)で大きく変わります。ここでは一般的な評価の考え方として、湿潤摩擦係数や制動距離に相当する指標で比較した際の「改善の出方」を参考値として示します(条件差で変動するため、あくまで設計検討の目安)。
| 評価項目(湿潤) | 溝なしPUトレッド | 導水槽付きPUトレッド |
|---|---|---|
| 湿潤動摩擦係数 μ(タイル/水膜 0.3mm相当) | 0.26〜0.32 | 0.34〜0.42(+約25〜35%) |
| 直進時の空転発生率(同一条件の繰り返し) | 8〜12% | 3〜6% |
| 旋回時の横滑り開始角(目安) | 小さめ(早期に滑りが出やすい) | 大きめ(粘りが出やすい) |
| 濡れ床の転がり安定性(官能評価) | ムラが出やすい | 安定しやすい |
数値の「伸び」そのものより重要なのは、濡れた路面で起こりがちな滑りの再現性(滑るときは毎回滑る)を抑え、操作感のブレを小さくする点です。スマートスーツケースや追従機器では、直進・旋回・微速の繰り返しが多く、そこに安定性が加わるとユーザー体験が変わります。
潮湿路面の問題は、旅行の雨天だけに限りません。商用施設の床清掃では、洗浄液や水が薄く広がった状態が日常的に発生します。このとき、床は一見きれいでも摩擦は落ち、タイヤは「静かに」滑り始めます。導水槽構造は、こうした薄い液膜に対しても排出経路を確保しやすく、走行の落ち着きにつながります。
傘の表面だけでは水は散っても、最後は雨樋(縁)から落ちます。導水槽も同じで、表面の水をどこへ運ぶかが設計の肝です。溝の向きや連続性が悪いと、途中で水が滞留してしまい、期待したほど水膜を切れません。つまり「溝がある」だけでなく、溝が“機能する”ことがポイントになります。
「溝を入れると接地面積が減り、摩耗が早くなるのでは?」という疑問は自然です。実際には、PUの配合や硬度設計、溝の深さ・角のR処理によって、摩耗の進み方は大きく変わります。適切に設計された導水槽は、濡れ面での無駄な空転や微小なスリップを抑えやすく、結果として偏摩耗の抑制に寄与するケースも見られます。
試験片のTaber摩耗(CS-17, 1kg, 1000回転)では、一般的な車輪用PUで70〜120 mg程度の摩耗量が一つの目安として語られます。溝の有無よりも、配合と表面の欠けにくさ(チッピング耐性)が寿命を左右します。
高湿度・温度変化・紫外線の影響でPUは劣化が進むことがあります。屋外運用や保管を想定するなら、硬度変化やひび割れ傾向を抑える材料設計と、表面が過度に硬化しないバランスが重要です。
導水槽構造のメリットを現場で出すには、溝の形状だけでなく、ユースケースに合わせた設計の整合が欠かせません。例えばスマートスーツケース向けなら静粛性と段差追従、清掃機器向けなら耐薬品性やゴミ噛みのしにくさも効いてきます。
雨天の移動、清掃直後の床、屋外〜屋内の出入り。こうした現実的なシーンを想定し、導水槽付きPUトレッドの評価方法や適用条件を整理すると、スマートスーツケースや自動追従機器の走行品質は一段上げやすくなります。
了解更多智能轮组解决方案濡れた路面で滑りを感じたとき、原因は「素材が弱い」ではなく「水の逃げ場がない」ことにある場合が少なくありません。導水槽構造は、その逃げ場を小さな形状で作り、日常の濡れ面を“扱える状態”へ近づける発想です。